漫画
過去を感じられるものに底知れない魅力を感じてしまう。
その中でも漫画は、失われた過去の“情景”を色濃く映し出しているような気がする。
思春期に熱中した諸星大二郎先生の妖怪ハンターシリーズ。
伊藤潤二先生の恐怖博物館短編集。その中で描かれている人物や風景は実際に体験したものではないにも関わらず、自分の中で原風景として心に刻まれている。
伊藤潤二/恐怖博物館
川上富江に出会ったのは十数年前。中学2年の夏休みだった。真夏のジメッとした空気の部屋で永遠と少女がバラバラに刻まれていく。今までには感じたことの無い異様な魅力。男性を魅了すれば彼らはそのうち自分を殺しバラバラにすることを知っているにも関わらず、懲りずに誘惑し続ける富江。自分もその魅力の虜になって本に穴があくほど読み耽っていた。それから程なくして廃刊になった「恐怖博物館」をせっせと探し歩いたのも懐かしい思い出。 青春の記憶と結びついた自分にとっては特別な作品。
華倫変/高速回転は光うさぎの夢をみるのか?
「忘れていく 全部忘れていく 忘れないものなんて無い。」
生きていく為には「都合の良い自分」を作り上げるしか方法はない。
街を一人で歩いている時。やり場の無い感情を沈める時。
ミレマが人格統合して消えてしまった様に
自分も「自分」を忘れていくしか術が無かった。
みんな素敵にくもっているという台詞が頭をよぎる。
記憶はなくても切なさは残る。
諸星大二郎 /妖怪ハンター
考古学なんて勿論触れたことは無い。
しかしこの本には下界を寄せ付けない
『死』の匂い、異世界の匂い、
物語に引き込ませる魔力を身にまとっている。
幽霊もUFOも言い伝えも恐れない現代人に是非読んで頂きたい作品。
映画
Dead Man Walking
死刑制度に対する是非であったり、この映画が持つ公開性や犯人側と被害者側の両方からの視点に議論が集中するのは良く分かる。
しかし、僕が初めてこの映画を見終わった時に真っ先に感じたことは、本物の「人間としての感情」が映画を通して自分の中に入ってきたということだった。
映画を見ている時はずっとショーン・ペンに感情移入していた。
日本映画のわざとらしい演技にあまりに慣れ過ぎてしまっていたのかもしれない。この映画の出来事は本当に現実に起きた事柄をそのまま切り取っているだけに思えた。ずっと無表情を装っていた死刑囚がシスターの献身的な努力によって、自分の「死」と直面し、最後に人間本来の魂を取り戻すシーン。
その瞬間が何よりも尊く心に響く。
ANGEL HEART
全編通して退廃的雰囲気・美学が貫かれている名作。
不安を煽るようなカット・演出が随所に施されていて、
初めて見たときはドキドキ感で心臓が破けそうだった。
ミッキーロークは勿論だけど、タバコや小道具、
あと何と言っても音楽がめちゃくちゃ格好良い。
ある人は、この世は結局誰も救われないということをこの映画から感じ取ったと言っていた。
2トンにも及ぶ牛の血が天井から降り注ぐ中、父と娘が近親相姦を犯すシーンは
言い用が難しいが、微かな希望が引き裂かれてバラバラになった心地がした。
ALTERED STATES
初めて見たケン・ラッセルの映画。
1979年公開作品、この映画は60年代から続くヒッピー、サイケ、ドラッグ等、意識革命を試みた潮流のひとつの表れ。という解釈がされているらしい。
高度成長期の1960年代日本でも寺山修司に代表されるようなアンダーグラウンド文化が栄えていたとよく見聞きするが、当時のアヴァンギャルドな空気感というのを一度でいいから肌で感じてみたいと強く思う。
話が脱線したが、アルタード・ステーツとは日本語では変性意識と訳すらしい。
内容もタイトルにたがわず、ザ・トリップムービーといった感じ。
ストーリーを楽しむというよりは、当時のアメリカの雰囲気や奇怪な映像世界、観てる側も取り込まれそうなトリップシーンをシンプルに楽しむ映画だと自分は思っている。あと音楽もすごく良い。
Amazonレビューを見ていると、生理学者エディが大昔の時代に戻ったところの類人猿で仲間と共に行動し野山を駆け回り動物に食らいついてるような場面がすっかり抜けているらしい。めちゃくちゃ観たいな。
音楽
Naxatras/Naxatras
海外のpsychedelic rockにのめり込むきっかけの一つになったバンド。
このアルバムに収録されている「Waves」という楽曲は、1st mini album収録予定「August in the water」を製作するに当たってとても参考にさせてもらった。
ラストに掛けてのギターソロは何回聴いても震える。傑作だ。
このアルバムを流してただ車に揺られていれば、太陽と一つになれる気がする。
somali yacht club/The Sun
Albumのアートワークも含めてかなりイケテル。
Facebookで2ndアルバム「The Sea」の受注生産限定BOXの生産過程を動画で載せていたり、手作りのLPとかTシャツでぐちゃぐちゃになっている部屋を公開していたり、人の温かみや手作りに拘って楽曲も製作しているんだろうなというのがひしひし伝わってくる。
シューゲイズでもハードロックでもないこの低音の感じがたまらなく好き。こういうサウンドプロダクションができるようになりたいと思う今日この頃。
COIL/The Ape Of Naples
Coilとの出会いは大阪難波のとあるレコードショップ店だった。
いつも部屋のPCの画面越しでしか新しい音楽との出会いが無い自分にとってはとてもドラマティックな出会いだった。
そんな出会いをきっかけにアルバムを聞き漁り、Dark Riverという楽曲はmynaのライブでも数回SEとして使用させてもらっている。
この「The Ape Of Naples」は数あるCoilのアルバムの中でも群を抜いてよく聴いたアルバムで、穏やかな賛美歌のような「Fire Of The Mind」はこのトップを飾るにふさわしい本当に美しい楽曲だ。空白も楽曲の一部なのだと彼らの音楽は教えてくれた。
インダストリアルで人間の本質を表現できるのは彼らしか居ない。